カビが健康被害を引き起こす病気の原因
カビは布団、タオル、蛇口、収納棚の本や服、エアコンや加湿器、冷蔵庫に洗濯機などの家電、風呂にトイレにキッチン、ありとあらゆる場所に存在しています。
室内の空気1m³中には、いつも数百から数千個のカビの胞子が浮遊しています。
春になると目に見えないスギ花粉を吸いこんで花粉症が発症するように、カビの胞子も小さいので目に見ることができません。
知らない間に吸いこんでしまい、感染症やアレルギーを引き起こす原因となります。
とはいえ、カビは感染力が弱いため、元気な身体なら特に問題になることはありません。
赤ちゃんや体力の低下した人はカビの発生原因にも要注意
カビの健康被害で気をつけないといけないのは抵抗力の弱い小さな子供や高齢者、疲労や病気などで抵抗力が落ちている場合です。
このように体力や免疫力が落ちている人は、カビの繁殖によって病気が引き起こされる可能性が高まります。
私たちの皮膚に存在する常在菌も、カビ菌の一種です。
身体を綺麗にし過ぎて必要以上に殺菌してしまったり抗生剤を使い過ぎたりすると、本来必要なカビ菌まで殺してしまい、悪玉のカビ菌が繁殖し、病気の原因になったりすることがありますので、あまり神経質になり過ぎる必要はありません。ただし、カビが繁殖し汚れた環境で増殖したカビを吸い続けて良いことがないのもまた事実です。
カビが引き起こす病気には、「感染症」の他に、「アレルギー」 「カビ中毒」があります。それぞれについて、詳しく見ていきます。
カビが引き起こす感染症
気管支肺アスペルギルス症
疲労がたまって免疫力が落ちている人がカビを大量に吸いこむと、肺からカビが入って、肺にカビが生えてしまうことがあります。それが気管支肺アスペルギルス症です。以前に肺の病気になって、肺が空洞になっていたりすると発生しやすくなります。
アスペルギルスは世界中で感染例が多いカビです。症状が出ない場合もありますが、咳や発熱、呼吸困難などが起こることがあります。
発生源は布団やカーペット、エアコン内部などです。
クリプトコッカス症
クリプトコッカス菌は土壌中に広く分布しているカビの一種です。鳩の糞に含まれている成分を栄養にして土壌中に増殖します。
乾いた糞とともに舞い上がった粉じんを人が吸い込むと、肺の中に菌が取り込まれてしまいます。
健康な人はほとんど感染しませんが、HIVの患者さんやお年寄りなど免疫力の弱った方は簡単に感染します。免疫機能が正常な人でもまれに感染することがあります。
症状が出ない場合もありますが、咳や胸痛、呼吸困難を訴えることがあります。髄膜に感染して髄膜炎を起こした時は、頭痛や錯乱などの症状が出る場合があります。
癜風(でんぷう)
癜風菌は皮膚の常在菌で、身体に普通にいる菌です。マラセチアという真菌が原因で発症する皮膚の病気で、背中や胸に茶色や白のかさかさした発疹ができます。
汗をかきやすい人や、脂っぽい人に多く発症し、感染力は強くありませんが、ごくまれに他の人へ感染することがあります。
カンジダ感染症
カンジダ菌は、皮膚や腸管、女性の生殖器などに普通に存在する常在菌です。
身体が弱った時や、抗生剤の使い過ぎなどで増殖し皮膚や口、膣などに感染症を起こします。口の中に白いカスのような物がたくさんついたり、女性では白いおりものが多くなりかゆみが出ます。
放っておくと、血液に乗って心臓や脾臓、腎臓、目などに広がり、重症になれば失明したり、死に至る事もあります。
水虫
水虫は正式には足白癬(あしはくせん)と言う皮膚の病気です。
白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が、皮膚の角質層に寄生することによって起こります。
水虫に感染した人から剥がれ落ちた垢を裸足で踏んだりすると、人から人へ感染します。
カビが原因になるアレルギー
気管支喘息
気管支喘息の原因は様々ですが、ダニが原因であることが多いと言われています。
しかし、アレルゲンがよくわからない場合、アルテルナリアという黒色真菌が原因となる場合があります。湿気の多い浴室や台所、押入れなどに存在することが多いです。
ゼイゼイやヒューヒューという音が聞こえる喘鳴が特徴で、咳や息切れ、発作がひどいときには呼吸困難にいたるのが症状です。
夏型過敏性肺炎
肺炎は冬に多いイメージがありますが、夏型過敏性肺炎(夏型肺炎)は夏場に多い病気です。通常の肺炎のように細菌やウイルスが原因ではなく、ホコリにまぎれているトリコスポロンというカビによって起こります。
風邪と症状が似ているので見過ごされることが多いのですが、治ったと思っても翌年の夏にまた発症するのが特徴です。日当たりや風通しが悪い場所で発生しやすいカビです。
毎年夏の終わり頃に発熱や咳が起こる場合は夏型過敏性肺炎を疑った方が良いかもしれません。慢性化すると肺が萎縮し、呼吸困難や呼吸不全が起こる場合もあります。
アレルギー性結膜炎
花粉や住まいの中にあるホコリなどのハウスダストが原因になって起こる目のアレルギーですが、カビの胞子も原因の一つです。
花粉には季節性がありますが、ホコリやカビなどのハウスダストは一年中家の中に存在するため、いつ発症してもおかしくありません。
目やまぶたがかゆくなり白目の部分が充血して目やにが出るのが特徴です。かかってしまったらあまりこすらず、はやめに眼科に行って抗生物質を処方してもらいましょう。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎の原因は様々ですが、ススカビと呼ばれるアルテルナリアが関係していると言われています。アルテルナリアの胞子は大きく、これが鼻の中に入って、鼻の粘膜にカビが付着することで過剰反応してアレルギー反応を起こします。くしゃみや鼻水、鼻づまりが主な症状です。
カビを食べると起きる中毒
食中毒
ほとんどの食中毒の原因は細菌とウイルスですが、まれにカビが作るカビ毒(マイコトキシン)が原因で食中毒が起こる場合があります。
カビが生えた表面を削っても、目に見えない菌糸は残っている場合がほとんどなので、カビが一度でも生えた食品は食べないようにしましょう。
癌
ガンは生活習慣病の一つとされていますが、カビが原因でガンになることもあります。
WHOによる発がん性評価において最高レベルの危険度とされているのがアフラトキシンというカビ毒です。トウモロコシなど穀類や落花生などのナッツ類に多いため、古くなったり変色したものは食べないようにしましょう。
一度に大量摂取すると肝障害を起こす場合がありますが、少量ではただちには人体に問題になることはありません。
ただ、長期間に渡って摂取した場合は体内にカビ毒が蓄積し、肝臓がんの原因になることがあります。
カビは放っておくと健康被害の原因に
いかがでしょうか?
思っている以上にカビが原因の病気が多いことがわかります。
カビは私たちの身近にいる存在で、必要なカビもいれば、命にかかわる危険なカビもいます。
身体が元気であれば必要以上に神経質になる必要はありませんが、カビの胞子を吸って良いことは何もありません。カビを吸い続けると、その人が持っている許容力を超えた段階でアレルギーを発症してしまうことにもつながります。
カビは放っておくとどんどん増殖しますし、ダニの餌になるのでダニを増やす原因でもあります。
知らず知らずのうちに健康を害さないためにも、普段からこまめに掃除と換気をすることが大切です。